適度な飲酒とは

2022/08/01 コラム

適度な飲酒とは

 

「酒は百薬の長」は故事ことわざ辞典によると、「適量の酒はどんな良薬よりも効果がある」とお酒を賛美した意味です。

 

嗜好品としての酒と飲酒習慣は長い歴史と豊かな文化的背景を有し、適量のアルコール摂取は、ストレスの解消、人間関係の円滑化、食欲の増進、動脈硬化の予防などがあげられます。

 

一方、過度の飲酒は健康障害の原因となり、アルコール依存症や中毒を生じる性質があるほか、肝障害、肥満、各種のがん、膵炎など様々な疾患の原因になっています。

 

 

厚生労働省が提唱している国民健康づくり運動である「健康日本 21」ではすべての国民が健康で明るく元気に生活できる社会の実現を図るためにさまざまな取り組みが行われています。

 

その中でアルコールの施策も取り上げられており、「健康日本21(第一次)」では、わが国の男性を対象とした研究のほか、欧米人を対象とした研究を集積して検討した結果から「節度ある適度な飲酒」を1 日平均純アルコールで20g 程度としてその知識の普及について言及しています。

 

 

また、「健康日本21(第二次)」では、「生活習慣病のリスクを高める飲酒量」を、1日当たりの純アルコール摂取量が男性で40g以上、女性で20g以上と定義してリスクを高める飲酒量の減少を目標としています。

 

通常、純アルコール量は、グラム(g)で表されます。お酒のラベルには、中に含まれるアルコールの度数が書かれていますので、純アルコール量はアルコールの比重も考慮して、酒の量(mL) ×度数または % / 100 × 0.8(比重) = 純アルコール量(g)と計算し、「ビール中ビン1本」「日本酒1合」「チューハイ(7%)350mL缶1本」「ウィスキーダブル1杯」などが20gの純アルコール量に相当します。

 

 

なお、この「節度ある適度な飲酒」には1日の飲酒量だけでなく以下の5点のことに留意する必要があるとされています。

 

1)女性は男性よりも少ない量が適当である。

2)少量の飲酒で顔面紅潮を来す等アルコール代謝能力の低い者では通常の代謝能を有する人よりも少ない量が適当である。

3)65歳以上の高齢者においては、より少量の飲酒が適当である。

4)アルコール依存症者においては適切な支援のもとに完全断酒が必要である

5) 飲酒習慣のない人に対してこの量の飲酒を推奨するものではない。

 

また、近年、低量アルコールの健康に良い効果が否定され、少量から中等度の飲酒でも健康に良くないことが次々と報告されています。

健康への影響を減らしたければ飲酒量は、少なければ少ない方が良く、飲まない人へ健康のため少量飲酒を勧めることはあってはならないといえます。

 

 

 

【参考文献】

横山裕一,飲酒の功罪,診断治療,98(12).22-26,2010

丸山勝也,節度ある飲酒とは-飲酒の功罪-,醸協,105(7),432-438,2010

尾崎米厚,アルコール健康障害の現状と疫学的最新知見,臨床栄養133(6)777-782,2018

厚生労働省,健康日本21(アルコール),

https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b5f.html

厚生労働省,e-ヘルスネット,飲酒,https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol,

厚生科学審議会地域保健健康増進栄養部会,次期国民健康づくり運動プラン策定専門委員会,健康日本21(第二次)の推進に関する資料:平成24年7月

厚生労働省,健康日本21(アルコール),

https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b5f.html

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