一緒に読もう! ~絵本で食育~

2023/06/01 コラム

一緒に読もう! ~絵本で食育~

あたたかい絵と、心地よい言葉の音とリズムに、ぐんぐんその世界に引き込まれていく…。

活字だけの本とは異なる魅力をもつ絵本は、年齢を問わず人気があります。

 

なかでも「食」をテーマにした絵本は、絵本の世界に入り込みながら、食への興味・関心を高めることができるため、多くの保育現場1)、学校現場の食教育の場面で活用されています。

また、絵本や物語に出てくる料理や世界を表現した料理を、学校給食の献立として登場させ、「食育と読書活動の双方の充実を図る活動」2)も、盛んに行われています。

物語から飛び出した料理を実際に味わえるなんて、想像しただけでも楽しい気持ちになれますね。

いろんな楽しみ方ができるのも、絵本の魅力のひとつです。

たくさんある絵本の中でも、大人と子どもが一緒に食について学ぶことができる絵本をいくつか紹介します。

 

◇『給食室のいちにち』

文:大塚菜生,絵:イシヤマアズサ,少年写真新聞社(2022)

学校で働く栄養士と調理員のお仕事の流れとともに、学校給食が出来上がる様子が丁寧に描かれている絵本です。

学校で食べられている給食は、どんな場所で、どんな人たちが、どんな思いを込めて、どんなふうに作っているのかを知ることができます。

食べる人と作る人の距離が遠くなってしまいがちな現代社会。 食べる側が作る人たちの様子や思いに触れる機会は、それほど多くありません。

食の向こう側を想像できるようになる、そんな絵本です。

 

 

◇『やさいのおしゃべり』

作:泉なほ,絵:いもとようこ,金の星社(2005)

物語の主人公は、冷蔵庫の野菜たち。ひそひそとおしゃべりしながら、おいしく食べてもらう順番を待っています。

「きらいだから」と食べてもらえないきゅうりくん、ずっと冷蔵庫にいてしわしわしみだらけになってしまっただいこんさん、ミイラになったしょうがさん…。

冷蔵庫にしまわれたまま、どんどん傷んで捨てられていく野菜たちのおしゃべりに、ご自宅の冷蔵庫を思い返す方も多いのではないでしょうか。

子どもと一緒に、大人もフードロスについて見直すきっかけを与えてくれる一冊です。

 

 

◇『あっくんはたべられない 食の困難と感覚過敏』

作:あっくん,監修:髙橋智,世音社(2019)

(画像は、https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784921012298より引用)

世の中には、口の中の触覚や、視覚、聴覚などの感覚過敏があるために、食べ物が食べづらく、学校給食や食事の場面で困難を抱えている人たちが少なからず存在します。

この絵本では、感覚過敏当事者である作者の方の実体験をもとにした、感覚過敏の苦悩と育ちが描かれています。

あとがきにある、保護者の思いや研究者の知見を読むことで、さらに理解は深まります。

食べづらさには様々な背景があるということ、食べることに関わる発達には個人差があるということを広く知ってもらうことで、救われる方もいるのではないでしょうか。

 

今回ご紹介した本は、いずれも本学の図書館に所蔵されています。

この本以外にも、食を大切にする気持ちや、食を通して他者を理解する気持ちを育むことにつながる絵本はたくさんあります。

大人も子どもも、一緒に絵本を読みながら、食の世界を広げていってはいかがでしょうか。

 

 

 

【参考文献】

1)大坂裕子・上杉宰世,保育所における食育活動への絵本の活用実態,日本食育学会誌No. 14(2),101-106(2020)

2)中山美由紀,「おはなし給食」の近年の動向,カレントアウェアネスNo.345, 16-22(2020)

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