女性の健康リスクとその対策 1

2020/04/01 コラム

女性の健康リスクとその対策 1

世界に類を見ないスピードで高齢化が進んでいる日本の中で、増加しているのは高齢者、それも高齢女性です。日本人女性は、世界で12位を争う長寿です。しかし、寝たきりを含んだ要介護となる期間も世界一長いのです。2018年における女性の平均寿命は87.3歳で、要介護になっていない年齢(健康寿命)は2016年で74.8歳、つまり約12年間が要介護期間になります。女性が要介護となる原因は、骨折・転倒や関節疾患、認知症、脳心血管疾患、高齢による衰弱です。

 

骨、関節、筋肉、神経系などを、運動器と総称するようになりました。運動器の障害によって、「立つ」「歩く」などの機能が低下した状態を、運動器症候群(ロコモティブシンドローム、略してロコモ)といいます。具体的な原因疾患には、骨粗しょう症、変形性関節症、変形性脊椎症、サルコペニア、神経障害等があります。高齢女性で特に問題となる状態は、骨粗しょう症、変形性関節症、サルコペニアと考えられます。今回は、ロコモへの対策を中心に述べます。

 

 

一般の人がロコモに気づく為には、7つの質問(表)が活用されています。各々の疾患の診断は整形外科や内科などで行われます。ともあれ、超高齢社会(65歳以上の高齢者の割合が人口の21%以上)となり、運動器を長持ちさせ、生涯にわたり、歩き続けるための対策が必要となってきました。

 

その対策としては、まず生活習慣病(肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常症など)を全般的に管理することが挙げられます。適切な体重を保つこと、そのためには、適正なカロリー摂取が必要です。肥満は種々の生活習慣病の素地となります。BMIとは、体重kgを身長mの二乗で割ったものです。18.5未満は低体重、25以上は肥満となります。適正なカロリーは、BMI22から算出される標準体重に活動量に応じて必要なエネルギーを掛け合わせて求めます。家事・デスクワークなどの軽い労作であれば、2530 kcal/kg標準体重なので、身長160 cm、体重56 kgの方であれば、約14001700 kcal/日と計算されます。

 

   

 

その他、カルシウム摂取(700800 mg/日が推奨)や、ビタミンD(魚・干しシイタケ)、ビタミンK(緑黄色野菜・納豆)を十分に摂取することが望ましいと考えられます。マグネシウム、ビタミン類(B6B12C)などを多く含んだ食品の摂取も望ましく、一方、リン、食塩(ナトリウム)、カフェイン、アルコールの過剰摂取を避けることが望ましいです。

 

 

運動習慣は、骨密度上昇や骨折予防、転倒予防に有用です。歩行やジョギングなどの有酸素運動、筋力を強化するレジスタンストレーニング、背筋強化訓練、バランス訓練(片脚起立)、スクワット、椅子からの立ち上がり訓練も考えられます。

 

高齢者では嚥下機能の低下による嚥下性肺炎が認められますので、その予防として口腔・舌・咽頭の訓練も良いと考えられます。よく噛んで食べる、よく話す、音読、歌唱なども良いと考えられます。

 

成長期に骨に刺激を与える運動(ジャンプ運動など)を行い、最大骨量を増やしておくことは、将来の骨粗しょう症予防の観点から非常に重要ですので、若い方々には取り組んでほしいと思います。

 

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